PS5増設で本当に低発熱なM.2 SSDは?実測データで比較・解説

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ゲーミングシーン、とりわけPS5のストレージ増設で本当に低発熱なM.2 SSDはどれなのか、実測の消費電力データをもとに比較・解説していきます。

NVMe M.2 SSDの発熱については実用シーンを度外視した、CrystalDiskMarkや連続読み書きを測定負荷とする温度検証によって誤解されることが多く、ストレージ増設に自作PC向けM.2 SSDが使用されるPlayStation 5関連のレビューも例外ではないので。

CrystalDiskMark自体は非常に優れたSSD用ベンチマークソフトです。

当記事ではCrystalDiskMarkに関連してネガティブな評価を下していますが、あくまで使い方が間違っているという話です。ベンチマークソフト自体には全く問題はないので誤解のないようにお願いします。

PlayStation 5のストレージ増設については、こちらの記事でオススメSSDや増設手順など詳細に解説しています。これから増設を検討している人は是非参考にしてください。

目次
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M.2 SSDの消費電力を測定する方法

NVMe M.2 SSDの消費電力には、当サイトの検証用にワンオフで特注したツール「GPU Power Tester」で測定しています。

GPU Power Testerはその名の通り、PCIEスロット経由とPCIE補助電源の消費電力を直接に測定しグラフィックボードの消費電力を検証する機器ですが、M.2延長カードを改造した増設ユニットを使用することでNVMe M.2 SSDの消費電力を測定できます。

グラフィックボードの消費電力測定に使用するようなライザーケーブル/ライザーカードから、さらにM.2-PCIE変換ボードを中継すると、機器の組み合わせやPCIE5.0等の高速接続規格によってはSSDの動作が不安定になることがありますが、この方法ならマザーボードのM.2スロットにM.2 SSDを直結した時と同等の性能で安定して消費電力を測定できます。


加えてM.2 SSDの消費電力を取得する基板は単純なM.2 SSDの延長カードなので、PlayStation 5のストレージ増設スロットにも設置でき、PlayStation 5におけるM.2 SSDの消費電力も正常に測定できます。

当サイトのPC向けSSDレビューでもすでに測定データを使用している測定ツールです。

ゲーム中の本当のM.2 SSD消費電力

本題はPS5に増設した時の消費電力ですが、ゲーミングシーンにおけるSSD消費電力の本当の姿を見てもらうため、先にゲーミングPCでの検証結果を紹介します。

まずはゲームではなく、SSD用ベンチマークとしてよく使用されるCrystalDiskMark8.0.4 (1GiB, +Mix)を測定負荷としてアクセスタイプ別に消費電力がどうなるのかチェックしていきます。

CrystalDiskMarkの設定は各アクセスタイプで測定時間20秒/測定回数1回、測定インターバル10秒に変更しています。12種類のアクセスタイプの負荷に加えて、テスト終了後のアイドル状態の消費電力も測定しています。

今回、SSD消費電力の実測値の一例として「Seagate FireCuda 530 1TB」を使用していますが、CrystalDiskMarkで負荷をかけた時の消費電力の推移は次のようになっています。

「Seagate FireCuda 530 1TB」の消費電力は連続アクセスの最大値だと平均5.5W程度の消費電力になります。

CDMスコアがGB/s単位になる連続アクセスではこのように大きな消費電力が発生しますが、一方で4Kランダム読み出しにおける消費電力は2.6W(左から4番目の低い山)と半分以下の数値になります。アイドル状態における消費電力は0.76Wでさらに下がります。

続いて実用シーンのSSD消費電力として当サイト的に重要なPCゲームのプレイシーンをチェックしていきます。

検証に使用しているタイトルは、DirectStorageに対応するPCゲームとしてラチェット&クランク パラレル・トラブル(Ratchet & Clank: Rift Apart)とFORSPOKEN、ストレージへのAPIが従来式の高画質PCゲームとしてMarvel’s Spider-Man RemasteredとForza Horizon 5です。
いずれも4K解像度でグラフィック設定は基本的に各設定項目が最高設定です。

以上4種類のゲームを使用して5つのシーン、各120秒間についてSSDの消費電力を測定しました。具体的には次の動画の通りです。

YouTube player

「Seagate FireCuda 530 1TB」のDirectStorage対応を含む4種類のPCゲーム、5つのシーンにおけるSSD消費電力の推移は次のようになっています。

グラフ中には上で行ったCrystalDiskMark8による消費電力測定の結果のうち、連続読み出し(SEQ 1M Q8T1)、ランダム読み出し(RND 4K Q1T1)、アイドルの3種類の消費電力も横線で併記しています。

2023年最新水準の高画質タイトルを使用して検証していますが、PCゲームシーンだとDirectStorage対応と従来式のどちらであっても、SSD消費電力の平均値は、CDMのランダム読み出しとアイドルの消費電力の中間に収まります。

DirectStorage対応PCゲーム、ラチェット&クランクのワープやFORSPOKENのロード・ファストトラベルでは連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。

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PS5でもSSD消費電力は4Kランダムとアイドルの中間

章タイトルで結論を書いてしまっていますが、ゲーミングPCの検証結果に続いて、PlayStation 5の検証結果です。

M.2 SSDをPlayStation 5に増設してPS5ネイティブ対応タイトルのインストール先にした時のゲームプレイ中の消費電力をチェックしていきます。

完全に同じシーンで検証しているのはラチェット&クランク パラレル・トラブルのみ、FORSPOKENとMarvel’s Spider-Man Remasteredは測定シーンが微妙に異なるのと、PCで使用したForza Horizon 5の代わりにPS5ではHorizon Forbidden Westです。

「Seagate FireCuda 530 1TB」をPlayStation 5の増設ストレージにしてPS5ネイティブ対応タイトルをプレイした時のM.2 SSD消費電力は次のようになっています。

PS5ネイティブ対応タイトルは全て、ゲーミングPCで言うところのDirectStorage対応タイトルのようなものなので、CDMの4Kランダム時の消費電力をベースに推移し、ゲーミングPCの時よりも平均的な消費電力は上がる傾向ですが、PS5でもM.2 SSDの消費電力はやはりCDMの4Kランダムとアイドルの2種類の中間に収まります。

ロード直後やファストトラベルで連続アクセス的な大きい消費電力も発生しますが、やはり、いずれも1~2秒あるかどうかという瞬間的なものです。

少し補足すると、ゲーミングPCの検証についてはグラフィックボードにPS5よりも圧倒的に高性能なGeForce RTX 4090を使用しており、グラフィック設定も最高、4K/120FPSでプレイしています。

DirectStorageに対応するゲームタイトル、ラチェット&クランク パラレル・トラブルとFORSPOKENのピーク消費電力や平均消費電力がPS5でゲーミングPCより若干低くなるのはそれが原因だと思います。

SSDの発熱・温度評価でCDMを使うのは間違い

PlayStation 5とゲーミングPCの両方の検証結果を見ての通り、ゲームプレイ中のSSD消費電力はCrystalDiskMarkで言うところの4Kランダム(Q1T1)読み出しとアイドルの2つの消費電力の中間に収まります。

CrystalDiskMark自体は非常に優れたSSD用ベンチマークソフトです。

しかしながら、基本的な8種類の読み書きアクセスの内、GB/s単位アクセススピードで連続アクセス的な消費電力が発生するワーストケースが3/4を占めるCrystalDiskMarkをゲーム用SSD、とりわけPlayStation 5の増設SSDの温度検証で負荷として使用するのは明確に誤りです。

単純にCrystalDiskMarkを使用したり、何らかの方法で連続読み書きアクセスで数GB/sのアクセスを常時発生させる形の測定負荷で温度検証を行うレビューサイトもありますが、実用的な意義は疑わしいので注意してください。

例えば後者だと書き込み5GB/sのSSDの場合、5分間(300秒)連続でも書き込みを行うと書き込み総量は1.5TBになります。書き込みでなく読み出しだったとしても、どちらにせよそんなアクセスは実用的に発生しないだろうと単純計算で分かります。あるとしても特殊なサーバーとか超限定的です。

一応言い訳をしておくと、当サイトでも2022年初頭まではCrystalDiskMarkを使ってそういう温度検証をしていましたが。その後、2022年後半からは温度センサーを使用した実際のPS5組み込み時の検証に変更しています。

ただ当サイトでは、あくまで『ワーストケースにも対応できるかどうかの確認』として掲載し、なおかつ『PS5組み込みであれば、CrystalDiskMarkを周回させるよりも負荷は小さく、内部で適切なエアフローもあるはず』とも補足していました。

あくまでワーストケース検証を活用した”実用上問題がないことの証明”であって、その検証結果を理由に最終評価の減点はしていません。

実用シーンを想定した温度検証とは?

この記事の読者の中にレビュアーの方がいたら、温度検証の際にはCrystalDiskMarkの標準プリセットや連続アクセスの負荷だけでなく、『4Kランダム(Q1T1)読み出しのみ』、もしくは『4Kランダム(Q1T1)読み出しで数分おきに、数秒だけ連続読み出しの混合アクセス』でも検証していただければ、ゲーミングシーン想定では、より実用的な評価になると思います。

どうしても連続読み書きを測定負荷として使いたいなら、単純に連続アクセスを発生させ続けるのではなく、『10GBの読み出しをしたら10秒インターバルを置く』など、時間当たりのデータ量にもう少し工夫が必要かと。

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CDMによる温度評価で発熱を誤解されるSSDも

繰り返しますが、CrystalDiskMark自体は非常に優れたSSD用ベンチマークソフトです。

ただ、結果的に誤った使い方をされてしまい、ゲーム用など実用的なシーンにおける発熱・温度について誤解されているSSD製品も存在します。

例えば「WD_BLACK SN850X 1TB」は連続アクセスにおける最大消費電力は6.0W前後となっており、スペック値で連続性能7GB/sのハイエンドPCIE4.0対応SSDの中でも消費電力が高めの製品ですが、4Kランダム読み出しは1.60Wとなっており、DRAMキャッシュレスなエントリークラスSSD並みに省電力です。

「WD_BLACK SN850X 1TB」をCrystalDiskMarkもしくは連続アクセスを発生させて測定負荷とし、温度検証を行うと、当然ですが発熱は相対的に大きいのでSSD温度が高く、微妙な評価になります。

しかしながら、上で見たようにPlayStation 5のストレージ増設を含め、ゲームプレイ中のSSD消費電力は4Kランダムとアイドルの中間に収まります。「WD_BLACK SN850X 1TB」もその例に漏れません。

下のグラフは各種SSDのゲームシーンの平均消費電力です。(似たような結果になるのでPS5ではなくゲーミングPCの検証データ)

ここまでの説明から当然ですが、ゲーム中のSSD消費電力はCrystalDiskMarkの中では連続アクセスではなく4Kランダムの消費電力に比例し、「WD_BLACK SN850X 1TB」はゲームシーンなら省電力、低発熱なSSDという評価になります。

PS5増設で本当に低発熱なM.2 SSDは?

最後に『PS5増設で本当に低発熱なM.2 SSDは?』という疑問についてまとめると、CrystalDiskMarkで言うなら4Kランダム(Q1T1)読み出し時に消費電力が低いSSDです。

ゲーミングPCではDirectStorage対応と従来式のゲームが混在しているので、4Kランダム読み出しとアイドルの2つの消費電力の中間で、ゲーム次第ですが、PlayStation 5のネイティブ対応タイトルはPCで言うところのDirectStorage対応なので、PS5増設に限定すればCrystalDiskMarkの4Kランダム(Q1T1)読み出しで消費電力を見ればよい、となります。

上のグラフの通り、消費電力の大小に優劣はありますが、PCIE4.0対応SSDでGB/s単位の連続アクセスにおける消費電力が5~6Wに対して、比較的に消費電力が大きいものでも4Kランダム(Q1T1)読み出しの消費電力は2W台半ば、連続読み出しの半分未満です。

この記事自体も連続アクセスを負荷として行われる温度検証の信憑性に対する警鐘(一部、発熱について誤解されている製品について情報修正)という意味合いが強く、

PS5のSSD増設で個別SSD製品の発熱が問題になることはない

というのが筆者の考えです。

実際に上のグラフにおいて相対的に消費電力の大きいNextorage NE1N 1TB、そのものではありませんが、ヒートシンク搭載版で、より消費電力が高い傾向にある大容量2TBのNextorage NEM-PA 2TBをPS5増設で検証していますが、全く問題はありませんでした。

NVMe M.2 SSDの発熱については実用シーンを度外視した、CrystalDiskMarkや連続読み書きを測定負荷とする温度検証によって誤解されることが多く、ストレージ増設に自作PC向けM.2 SSDが使用されるPlayStation 5関連のレビューも例外ではありません。

そういった温度検証で分かるのは、『ワーストケースな負荷でサーマルスロットリングが起きなければ、PS5増設に使用してもゲームプレイ中にサーマルスロットリングは起きないだろう』という程度の推測に過ぎません。

実用シーンにおける発熱の大小評価、ましてや個別製品の比較にはほぼ意味のない検証です。

自家用乗用車において、時速100km超でどれだけ走れるかより、時速30~60km程度でどれだけ走れるかのほうが重要と、燃費の話に例えると分かり易いでしょうか。

M.2 SSDの消費電力は測定そのもののハードルが非常に高いので、これまでワーストケースで検証するしかなかったのは仕方ない部分もあります。今回、定性的にどうすればいいかも提示しているので、CDMや連続読み書きによる温度検証の結果をもって『製品Aは製品Bより低温(低発熱)』のような評価方法が終わりになる、この記事がその一石になればいいなと。

以上、『PS5増設で本当に低発熱なSSDは?実測データで比較・解説』でした。

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容量ラインナップ: 1TB / 2TB / 4TB / 8TB
PCIE4.0x4接続 NVMe M.2 SSD
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