AMD Ryzen Threadripper 3990X


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AMD第3世代Ryzen Threadripper CPUから64コア128スレッドの最上位モデル「AMD Ryzen Threadripper 3990X」をレビューしていきます。128スレッド(論理コア)というウルトラメニーコアなRyzen Threadripper 3990Xが本領を発揮できるクリエイティブタスクはどれで、下位モデルRyzen Threadripper 3970Xをどれくらい上回るパフォーマンスが発揮できるのか、徹底検証していきます。


AMD Ryzen Threadripper 3990X_spec


簡易水冷グラボ搭載「G-Master Hydro TRX40 Extreme」






AMD Ryzen Threadripper 3990X レビュー目次


1.AMD Ryzen Threadripper 3990Xの外観・付属品・概要
2.AMD Ryzen Threadripper 3990Xの検証機材・動作設定
3.AMD Ryzen Threadripper 3990Xの動作クロック・消費電力・温度

  ・Precision Boost Overdriveによるクロックアップについて

4.AMD Ryzen Threadripper 3990Xの基礎ベンチマーク
5.AMD Ryzen Threadripper 3990Xのクリエイティブ性能

  ・3Dレンダリング性能
  ・動画エンコード性能
  ・RAW現像性能
  ・PCゲーム/スマホアプリのビルド性能
6.AMD Ryzen Threadripper 3990Xのゲーミング性能
  ・4K解像度/60FPSターゲット
  ・フルHD解像度/ハイフレームレート
7.CPUエンコーダとリアルタイム配信について
8.AMD Ryzen Threadripper 3990Xのレビューまとめ
  ・温度・消費電力について
  ・クリエイティブ性能について
  ・ゲーム性能について
  ・総評 - プロセッサグループの壁を超えるには集約か分散か


【機材協力:サイコム】


AMD Ryzen Threadripper 3990Xの外観・付属品・概要

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の外観や付属品について簡単にチェックしておきます。またこの章では「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の仕様等について簡単に触れておきたい概要もあれば紹介します。
「AMD Ryzen Threadripper 3990X」など第3世代Ryzen Threadripperでは、第1/2世代のsTR4ソケットから、sTRX4ソケットにCPUソケットが変わりましたが、CPU本体については製品名など刻印が若干違うことを除けば外形やオレンジ色のプラスチック製ガイドなどほぼ同じ仕様です。
DSC07614_DxO

注意点として「AMD Ryzen Threadripper 3970X」は対応CPUソケットがTRX4に変わり、TR4ソケットのX399マザーボードとは非互換なので注意してください。
ASRock、ASUS、GIGABYTE、MSIの主要4社からは500ドル程度のエントリーユーザー向けモデルから、700ドル~1000ドルと高価なプレミアムモデルまで様々なTRX40マザーボードがラインナップされています。
AMD TRX40マザーボードのレビュー記事一覧へ
Ryzen Threadripper 3rd_TRX40-MB

AMD公式によって発表されている基本スペックを確認すると、「Ryzen Threadripper 3990X」は64コア128スレッドでベースクロック2.9GHz、単コア最大ブーストクロック4.3GHz、キャッシュ容量288MB、TDP280Wです。単コア最大ブーストクロックに注目すると3970Xや3960Xが4.5GHzとなっており、電力的に単コアブーストクロックを制限する意味もあまりないように思うので、使用されているCCDダイは特別に選別されているわけでもなさそうです。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_spec

AMD Ryzen Threadripper 3990Xに加えて、下位モデルAMD Ryzen Threadripper 3970X、競合製品のIntel Xeon W-3175XとIntel Core i9 10980XEのスペックを早見表にまとめて比較すると次のようになっています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X スペック簡易比較

AMD Ryzen Threadripper 3990X
AMD Ryzen Threadripper 3970X Xeon W-3175X
Core i9 10980XE
コアスレッド数 64コア
128スレッド
32コア
64スレッド
28コア
56スレッド
18コア
36スレッド
ベースクロック 2.9GHz 3.7GHz
3.1GHz 3.0GHz
最大ブースト 4.3GHz 4.5GHz 4.3GHz 4.8GHz
オーバークロック
O
L3キャッシュ 288MB 144MB 38.5MB 24.75MB
TDP 280W 280W 255W 165W
CPUクーラー X
iGPU
X
メモリ ch / pcs
4 / 8 4 / 8
6 / 12
4 / 8
CPU直結PCIEレーン
56 48
おおよその国内価格
(北米希望小売価格)

48万円
(3990ドル)

25万円
(1999ドル)
38万円
(2999ドル)
13.8万円
(979ドル)

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」のコアスレッド数は64コア128スレッドですが、Intel製でコアスレッド数が最大になるのはサーバー・ワークステーション向けエンタープライズCPUなXeon Platinum 8280のデュアルCPU構成による56コア112スレッドです。Ryzen Threadripper 3990Xは1つのCPUで世界最大のコアスレッド数を実現しており、なおかつ価格は5分の1、なおかつV-Rayによるレンダリング速度は30%上回るという圧倒的なコストパフォーマンスです。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_v-ray

64コア128スレッドともなるとCinebench R15も倍速かと疑うレベルの爆速、数秒で終わってしまいます。4コア8スレッドのCore i7でゆっくり眺めていたのが数年前とは信じられません。スコアも「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は10000越えとなっており、Core i7 7700Kが1000ちょうどくらいだったので10倍です。


PCIEレーンの拡張性、トポロジー構造、Infinity Fabricとメモリ周波数の同期など第3世代Ryzen Threadripperに共通する内容については、32コア64スレッドの「AMD Ryzen Threadripper 3970X」や24コア48スレッドの「AMD Ryzen Threadripper 3960X」のレビュー記事でも触れているので今回は割愛します。
「AMD Ryzen Threadripper 3970X」をレビュー
「AMD Ryzen Threadripper 3960X」をレビュー

AMD Ryzen Threadripper 3970X

AMD公式からも発売時のプレススライドでアナウンスされたように、64コア128スレッドという超メニーコアな「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はそのポテンシャルを最大限発揮する上で理解すべき内容も多いので、そちらについて優先して説明していきます。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_howtouse

上のスライドのように「AMD Ryzen Threadripper 3990X」が64コア128スレッドという圧倒的リソースによるマルチスレッド性能を十分に発揮するにはいくつかの前提条件があり、特に重要なものを抜粋すると次のように、赤字で書いた必須要件と、パフォーマンス向上を目指すための推奨要件の2種類に分けられます。
  • Windows10 OSはHomeではなくProを使用する必要がある
  • アプリケーションが65論理コア+に対応している必要がある
  • 1論理コア当たり1~2GBの割り当てが可能なシステムメモリ128~256GB容量を推奨
  • ストレージはNVMe SSDを推奨 (WD Black SN750やSamsung 970 EVO Plusなど)
    読み書き分担、ウィルススキャンやバックアップの無効化などアクセス最適化も
まず「AMD Ryzen Threadripper 3990X」が本領を発揮するための必須要件その1について、Windows10 OSにはHome EditionとProfessional Editionの2種類がありますが、AMD Ryzen Threadripper 3990X環境ではWindows10 Professional Editionが推奨されます。
エンスージアスト向けでもせいぜい物理20コア未満かつ、1枚当たりの最大メモリ容量が16GB(チャンネル8枚組で128GB容量)だった従来の環境においては、両エディションの違いはリモートデスクトップ等の一部機能の可否に限定されハードウェアに影響する違いは特にありませんでした。(比較はウィキペディアが詳しい)
しかしながらAMD Ryzen Threadripper 3990Xでは論理コア(スレッド数)が65を超え、またECC等ではなく一般的な自作PCで使用可能できるUnbufferedな1枚当たり32GBのDDR4メモリが普及したことで最大システムメモリが256GB容量になり、Windows10 Home Editionが使用できるリソースの上限を突破してしまいました。
AMD Ryzen Threadripper 3990Xの128論理コアをフル活用し、また256GB容量のシステムメモリを使用するにはWindows10 Professional Editionが必要になるので注意してください。
Window10 エディション別対応ハードウェア比較
エディション Home Professional
最大論理コア 64スレッド
(1プロセッサグループ)
128スレッド
(2プロセッサグループ)
最大システムメモリ 128GB 2TB

次に65論理コア以上で重要になるWindows10のプロセッサグループについて説明していきます。
Windows10 Professional Editionは最大で128論理コア(スレッド)に対応していますが、OSは128スレッドを単一のプロセッサとして認識するのではなく、1グループ64論理コアの2つのプロセッサグループとして認識します。ここで問題になるのはプロセッサグループの壁を超えて2つのプロセッサグループを活用できるアプリと、そうでなく1つのプロセッサグループしか活用できないアプリがあることです。
1つのプロセッサグループしか活用できないアプリは自動的にどちらかのプロセッサグループに割り振られ(ランダムではなく規則性はあるようですが、割り振りの詳細についてはちょっとよくわからない)、そのプロセッサグループの中で実行されます。
1つのプロセッサグループしか活用できないアプリはタスクマネージャーの詳細タブでアプリを選択、右クリックしてメニューに表示される関係の設定から、そのアプリを実行するプロセッサグループの切り替えが可能です。
Windows10_processor group_1
AMD Ryzen Threadripper 3990Xの128論理コアのCPUなので64論理コアが2つのプロセッサグループに分けられています。
Windows10_processor group_2

64論理コアを超えて複数プロセッサグループがある環境において、各種アプリがプロセッサグループに対してどのように動作するか、一部を抜粋して簡単にまとめると次のようになります。
プロセッサグループとアプリの関係
レンダリング Cinema 4D
(Cinebench)

プロセッサグループを超えて実行可能
Blender
プロセッサグループを超えて実行可能
Corona
プロセッサグループを超えて実行可能
V-Ray
プロセッサグループを超えて実行可能
POV-RAY ×
対応予定だが、アップデート待ち
エンコード x264 ×
プロセッサグループを超えられない
x265
プロセッサグループを超えるが、
全スレッドを上手く使うことができない
RAW現像 DxO
並列した数だけRAW現像実行exeが動き、各exeはプロセッサグループを超えてランダムに割り当てられる
アプリ製作
(コンパイル)
アンリアルエンジン4
プロセッサグループを超えてビルド可能

まずレンダリング関連は複数プロセッサグループと相性が良く、Cinema 4D(Cinebench)やBlenderのような有名どころは対応しています。ただしPOV-Rayなど対応自体は公表されているもののアップデートによる対応待ちのアプリもあるので注意が必要です。
またゲーム・アプリ製作(内容的にはコンパイルに近い)について、アンリアルエンジン4のゲームビルドがプロセッサグループを超えた実行に対応していたのは意外でしたが、比較的、複数プロセッサグループと相性が良いようです。
Windows10_processor group_UE4

以下、プロセッサグループの壁を超えられないタスクについて簡単に説明を加えていきます。
動画のエンコードについて、現在最も主流なx264はプロセッサグループを超えることができません。ただし、エンコードについては64論理コアの時点ですでに単一実行でCPUが遊びます。単一実行であればフルHDなら8コア16スレッド、4Kでも16コア32スレッド程度あれば十分なので、必ずしも1つ1つがプロセッサグループを超える必要はないというのが実状です。
現状では複数のプロセッサグループへ均等に割り振ることができないですが、今後の展望としては、アプリもしくはOSによって空いているプロセッサグループを選んで並列実行される各エンコード作業を割り振ることができれば十分だと思います。実際に手動でエンコードの実行ファイルをプロセッサグループへ均等に割り振ると全論理コアを活用することができます。
Windows10_processor group_x264
また近年次世代規格として普及しつつあるx265はプロセッサグループを超えて実行できますが、一方のプロセッサグループの使用率が安定せず(50~100%で変動する)、対応状態は不十分です。ただし4K解像度のエンコードであれば6個くらいを並列化して実行してやると、64論理コアよりも総合して高い変換速度を実現できます。
Windows10_processor group_x265
RAW現像についてはレンダリングのように巨大な1つの実行exeがあるわけでなく、現像する画像1枚ずつに2~3スレッド以下を使う実行exeがあり、それが数十並列実行する形なので、プロセッサグループはあまり気にする必要がありません。
ただし、今回検証したDxO PhotoLabのように2つのプロセッサグループへ上手く分配できないと虫食い状態でCPUが遊ぶので、個別の実行exeの分配には改善の余地があると思います。ちなみにDxO PhotoLabで最速になるのは「AMD Ryzen Threadripper 3990X」において並列実行数42で、CPU使用率は下のように虫食い状態でしたが、44以上にするとRAW現像速度が大幅に低下しました。
Windows10_processor group_DxO


以上のように「AMD Ryzen Threadripper 3990X」が本領を発揮するための必須要件に加えて、パフォーマンスを最大限引き上げるための推奨要件もありますが、推奨要件は簡単にまとめると『大容量なシステムメモリと高速なストレージを積むこと』となります。
今回のレビューでは残念ながら256GB容量のシステムメモリを用意することはできなかったのですが、システムストレージには「Intel Optane SSD 905P 960GB」を使用しました。
DSC07713_DxO

1枚当たり32GB容量のDDR4メモリについては一番最初にリリースされたSamsung製バルクメモリのレビュー記事を公開しています。最近ではCorsairやG.Skillから4枚組128GBや8枚組256GB容量でメモリ周波数3200MHzの高速動作に対応したメモリキットも発売されているので、予算の問題を除けば導入は難しくないと思います。
1枚32GBのSamsung製DDR4メモリをレビュー。4枚で128GB!!
Samsung M378A4G43MB1-CTD

また高速なストレージについてはAMD公式が名前を挙げているNVMe M.2 SSDの「WD Black SN750」や「Samsung SSD 970 EVO Plus」以外に、当サイトで推奨している「Kingston KC2000」、さらに、これらTLC型NAND採用SSDよりランダム性能に優れる「Intel Optane SSD 905P」や「Samsung 983 ZET」がオススメです。それぞれレビュー記事を公開しているので参考にしてください。
indows10_processor group_SSD



AMD Ryzen Threadripper 3990Xの検証機材・動作設定

以下、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の各種検証を行うベンチ機、および比較対象となる各CPUのベンチ機の詳細となります。
AMD TRX40環境 テストベンチ機の構成
CPU AMD Ryzen Threadripper 3990X(レビュー
AMD Ryzen Threadripper 3970X(レビュー
AMD Ryzen Threadripper 3960X(レビュー
マザーボード ASRock TRX40 Taichi (レビュー
CPUクーラー ENERMAX LIQTECH TR4 II 360
360サイズ簡易水冷 (レビュー
Noctua NF-A12x25 PWM x3 (レビュー
メインメモリ G.Skill Trident Z RGB
F4-3200C14Q-32GTZRX
(+F4-3600C14D-16GTZN×2セット)
DDR4 8GB*8=64GB (レビュー
3600MHz, CL16-16-16-36-CR1
ビデオカード(共通) ZOTAC RTX 2080Ti AMP Extreme Core
レビュー
システムストレージ(3990X) Intel Optane SSD 905P 960GB (レビュー
システムストレージ(共通) Samsung 860 PRO 256GB (レビュー
OS(共通) Windows10 Home 64bit
電源ユニット(共通) Corsair HX1200i (レビュー
ベンチ板 STREACOM BC1 (レビュー

AMD TRX40_Test bench_20200201

AMD AM4(X570)環境のRyzen CPUと同様に、AMD TRX40環境の第3世代Ryzen Threadripperも冷却性能依存の自動OC機能「XFR (Extended Frequency Range)」には対応していますが、3970Xや3960Xは仕様値としていずれもPPTが280Wで、TDPと同じ値が設定されており、XFRによってTDPを超過する動作になることはないため、測定に当たって特に個別の設定を行いません。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PPT




第3世代Ryzen Threadripper検証環境のシステムメモリには、第3世代Ryzenプラットフォームに最適化されたハイパフォーマンスOCメモリの最速モデル「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」を使用しています。3600MHz/CL14の最速モデル、3200MHz/CL14や3600MHz/CL16といった定番スペックがラインナップされ、高級感のあるヒートシンクや8分割ARGB LEDを搭載してデザイン面でも優れる「G.Skill Trident Z Neo」シリーズは、第3世代Ryzenや第3世代Ryzen Threadripperの自作PCで性能を追求するなら間違いのないオススメなOCメモリです。
「G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN」をレビュー
G.Skill Trident Z Neo F4-3600C14Q-32GTZN

第3世代Ryzen Threadripper関連の検証機材としてTRX40マザーボードには「ASRock TRX40 Taichi」を使用しています。「ASRock TRX40 Taichi」は自作PCマザーボード向けとしては初となる90A対応Dr. MOSで構成される16フェーズの超堅牢なVRM電源回路、そして全高54mmの超大型かつアクティブ冷却ファン搭載のVRM電源クーラーを搭載しており、PBOによる全コア4GHzクロックアップを施したRyzen Threadripper 3990Xが運用可能な抜群のパフォーマンスを発揮します。各社がハイエンドモデルでE-ATXなど大型サイズを採用する中、標準のATXサイズで使い勝手の良いマザーボードとなっており、TRX40マザーボードの中でも特にオススメの1枚です。
「ASRock TRX40 Taichi」をレビュー。ATXサイズで32コアスリッパに完全対応!
ASRock TRX40 Taichi

ベンチ機のシステムストレージにはSamsung製MLCタイプ64層V-NANDのメモリチップを採用する2019年最速のプロフェッショナル向け2.5インチSATA SSD「Samsung SSD 860 PRO 256GB」を使用しています。Samsung SSD 860 PROシリーズは容量単価が高価ではあるものの、システムストレージに最適な256GBや512GBモデルは製品価格としては手を伸ばしやすい範囲に収まっており、Intel Core-XやAMD Ryzen TRのようなハイエンドデスクトップ環境はもちろん、メインストリーム向けでもハイパフォーマンスな環境を目指すのであれば、システムストレージ用に一押しのSSDです。
「Samsung SSD 860 PRO 256GB」をレビュー
Samsung SSD 860 PRO 256GB

CPUとCPUクーラー間の熱伝導グリスには当サイト推奨で管理人も愛用しているお馴染みのクマさんグリス(Thermal Grizzly Kryonaut)を塗りました。使い切りの小容量から何度も塗りなおせる大容量までバリエーションも豊富で、性能面でも熱伝導効率が高く、塗布しやすい柔らかいグリスなのでおすすめです。
ASRock TRX40 Taichi review_04621_DxO


グリスを塗る量はてきとうでOKです。管理人はヘラとかも使わず中央山盛りで対角線だけ若干伸ばして塗っています。Thermal Grizzly Kryonautは柔らかいグリスで適量が塗布されていれば、CPUクーラー固定時の圧着でヒートスプレッダ全体へ自然に伸びるので塗り方を気にする必要もありません。
Thermal Grizzly Kryonaut_Threadripper
普段は熱伝導グリスを上のようにてきとうに塗っているのですが、Ryzen Threadripperはヒートスプレッダが大きいため、『最初に等間隔に9カ所小さめに熱伝導グリスを落として、さらにその間の4か所に少し大きめに熱伝導グリスを塗る』というNoctua式の塗り方が良い感じだったので今回はNoctua式を採用しました。
Noctua TR4_tp
この塗り方をするとRyzen Threadripperの大型ヒートスプレッダでもCPUクーラーの圧着でヒートスプレッダ全体へ熱伝導グリスが綺麗に伸びます。ただしグリスをかなり大量に使うので注意。
Thermal Grizzly Kryonaut_Threadripper_noctua

サーマルグリスの代用品として、数年スパンの長期使用においても性能低下が基本的になく再利用も可能、グリスが零れてマザーボードが汚れたり壊れる心配もないので、炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」もオススメです。
「Thermal Grizzly Carbonaut」はRyzen TR 3970Xを冷やせるか!?
Thermal Grizzly Carbonaut_Ryzen Threadripper 3990X



AMD Ryzen Threadripper 3990Xの動作クロック・消費電力・温度

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」に関する検証のはじめに、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の動作クロック、消費電力、温度など同CPUの基本的な動作についてチェックしていきます。
「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は64コア128スレッドのCPUで、AMD公式の仕様ではベースクロック2.9GHz、単コア最大ブーストクロック4.3GHzとなっています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_CPU-Z
HWiNFOから「AMD Ryzen Threadripper 3990X」のコアクロックの挙動を確認したところ、確かに負荷の軽い場面では最大4.3GHz程度で動作するコアがありました。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_Core-Clock_Boost_Single
「AMD Ryzen Threadripper 3990X」をTRX40マザーボード「ASRock TRX40 Taichi(BIOS:1.50)」と組み合わせてCPU動作をBIOS標準設定とし、CinebenchやAviult&x264エンコードを実行したところ、いずれのケースにおいても全64コアへ同時に大きな負荷がかかった時の動作クロックは平均3.1~3.2GHz程度でした。この時のCPU Package Powerは280W前後で推移しています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_Core-Clock_Boost_Multi
メインストリーム向けRyzen CPUでは実際の電力に関する内部設定であるPPTがTDPより高い値に設定されていますが、前世代と同じく「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は仕様値TDPと同じくPPT280Wに設定されているのでTDPを大きく上回るCPU消費電力が発生することはなく、上述のようにPPT280W前後で動作時にCPUコアクロックはベースクロック2.9GHz以上で安定しました。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PPT


続いてCPU消費電力の検証結果をチェックしていきますが、当サイトのCPUレビューでは主として”CPU温度への影響要因”という意味においてCPU消費電力を評価しているので、動画のエンコードによって長期間電力制限が効いている状態の平均的な消費電力をCPU消費電力として比較します。
個人的な意見としては短期間電力制限は短期間かつCPU温度によっても制御されるのでCPU温度への影響要因として比重は小さく、また瞬間ピーク電力はせいぜいがTDP+100W程度なので、マザーボードVRM電源の破損を心配するほどではなく、その程度の電力超過は電源ユニットで十分吸収できるので、評価対象としてあまり意味がないと思っています。
またCPU製品仕様のTDPについては、定義がIntel/AMDで厳密には異なり、各社の具体的な測定・算出方法も不明なので、CPU動作クロックを含めて総合的に判断する必要があるものの、基本的には長期間電力制限時の消費電力がTDP仕様値とほぼ一致、もしくはTDP仕様値を下回れば正常であると評価します。
当レビュー記事では簡単のため割愛しますが、CPUの消費電力に関する評価基準の補足として下記の記事も参考にしてください。
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について - 爆熱評価のウソほんと
2019年最新CPUの消費電力・発熱・TDP・温度について

CPU消費電力の測定には電源ユニット「Corsair HX1200i」のCorsair Linkによる電力ログ機能を用いてコンセントからの出力ではなく変換ロスを差し引いた入力電力をチェックしています。
また電力測定の際は上記の主電源ユニットに加えて、CPUへの電力供給を行うEPS端子を除いた、各種電源端子へ接続するために別の副電源ユニットを使用しています。そのため測定値にはEPS電源端子を経由して供給されるCPU消費電力以外の消費電力は含まれません。なお電源ユニットに対する実際の最大瞬間負荷は測定値より50~100W上回る場合があるので電源ユニットの電源容量選択の参考にする場合は注意してください。
AMD Ryzen Threadripper 3990X review_00797
AMD Ryzen Threadripper 3990X_power_cl

CPUの消費電力や温度の測定を行う負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間6分40秒、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)を変換ソースとして、Aviutl&x264を使って動画のエンコードを行います。動画エンコードの同時実行数については4~6コアは並列なし、8~14コアは2並列実行、16コア以上は3並列実行としています。
注:CPUのストレステストについてはOCCTやPrimeなど専用負荷ソフトを使用しているレビューもありますが、管理人の私見としてはCPU負荷が非現実的なので、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースを想定した場合、ほぼ最大のCPU負荷となるx264による動画エンコードとストレステストに採用しています。
Core i9 7980XE_Test

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」と比較対象の各CPUについて、上記負荷テスト中の”平均値を消費電力”、”最大値を瞬間的な最大電源負荷”と表記した場合、消費電力測定結果は次のようになっています。 【全CPU比較データ

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はCPUクーラーによる冷却が十分な環境で運用する場合、全コア3.1~3.2GHz程度で動作して、EPS電源経由のCPU消費電力は208.8Wに達しました。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_power_1_eps

注意点として、Ryzen ThreadripperではEPS電源端子経由で測定した消費電力が同社メインストリーム向けを含めてその他のプラットフォームに比べて低めの数値が出ています。確認のため同じストレステストにおいて、システム消費電力(EPS電源消費電力と同じくCorsair HX1200iの出力電力ログを参照)と、CPU Package Power(HWiNFOによってソフトウェアモニタリング)の2種類について測定してみました。下のグラフはシステム消費電力です。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_power_2_sys
なおCPU Package Powerは一部のマザーボードやBIOS設定によっては正常に検出できていない可能性があるので比較には注意が必要です。

各CPUで違いを分かりやすくするため、システム消費電力とEPS電源消費電力、システム消費電力とCPU Package Powerの2種類の差分を取ってグラフ化しました。システム消費電力とEPS電源消費電力の差分を見ると、AMD Ryzen 9 3950XとIntel Core i9 9980XEは40~50W程度に対して、Ryzen Threadripper各種は100W以上の差があります。またシステム消費電力とCPU Package Powerの差分を比較すると、2990WXと3970Xが20W程度大きいですが、60W前後で差が小さくなりました。
Ryzen Threadripper環境ではATX24PIN経由でCPU消費電力のうち一部が供給されており、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は特にその傾向が強い(ATX24PIN経由のCPU消費電力が大きい)ようです。そういった事情もあり正確な評価が難しいのですが、システム消費電力の相対的な関係を見る限り、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は実際のCPU消費電力も280W程度と考えて問題ないと思います。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_power_4_def

また「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はCPU消費電力が非常に高いのでマザーボードVRM電源回路への負荷も気になるところですが、主要4社のハイエンドモデルはもちろんのこと、ASRock TRX40 CreatorやASUS Prime TRX40-Proのような5万円台でTRX40の中で最安値クラスの製品であっても、簡易水冷CPUクーラーを組み合わせた環境に置いてVRM電源回路は標準装備のみで問題ありませんでした。X399マザーボードでTDP250WのWXシリーズを使用する時のようにVRM電源の冷却に気を使う必要はないので、その点で導入のハードルは下がっています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_FLIR


Precision Boost Overdriveによるクロックアップについて

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は標準ではTDP280Wの電力制限が効いて、下位モデルの3970Xや3960Xに比べてコアクロックが低いので、単コアブーストを維持したまま全コア負荷時のコアクロックを引き上げることが可能なOC機能「Precision Boost Overdrive」について紹介します。

第3世代Ryzenや第3世代Ryzen/Ryzen Threadripper CPUの動作クロックや「Precision Boost Overdrive」に関する予備知識については下の記事で概要を解説しているので参考にしてください。
第2世代Ryzenの新機能「Precision Boost Overdrive」を徹底解説
precision-boost-overdrive

最初に設定方法について紹介しておくと、Precision Boost Overdriveによるクロックアップ設定にはPPTとTDCとEDCの3つの変数がありますが、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」では、PPT:1700W、TDC:1200A、EDC:1250Aと非常に高い数値が設定されています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_Default
PPTとTDCとEDCの3つの変数の決め方ですが、CPU消費電力に対して特に大きい影響があるのはPPTです。最初にTDCとEDCは1000A以上で十分に大きい数値を設定しておき、Cinebenchを数回実行してCPU温度が70度前後に収まるPPTを探ります。(Cinebenchで70度前後なら、長時間のレンダリングやエンコードでもファン速度が十分ならCPU温度は80度前後に収まるはずです)
使用しているCPUクーラーで冷やすことができるPPTが分かったら、そのPPTで負荷をかけた時のTDCとEDCの最大値をHWiNFO等のモニタリングソフトかRyzen Master(%表示でわかりにくいですが)で確認します。最大値+0~50Aの値にTDCとEDCをそれぞれ下げてやるとコアクロックの伸びが良くなります。
参考までに「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の場合はTDC:500AとEDC:700Aで、各自の環境でCPU温度が80度前後に収まるPPTを探るのが手っ取り早い設定方法です。
Precision Boost Overdrive_setting_Ryzen Master
上のように各環境に合わせた適切な設定値を探る段階では、3変数の変更だけなら再起動が不要なのでRyzen Master上で設定するのが楽ですが、設定値が決まったらPrecision Boost Overdriveの設定はBIOSから行うのがオススメです。加えてコア電圧をオフセットモードで-100mVくらいに設定すると、温度(消費電力)が下がってコアクロックの伸びが良くなります。
Precision Boost Overdrive_setting_BIOS

一例として、PPT:800W、TDC:500A、EDC:700Aの設定値で「AMD Ryzen Threadripper 3990X」にPrecision Boost Overdriveを適用すると、CinebenchR20のスコアは31000を超え、システム消費電力も900W超に達します。参考までに定格ではスコア25000前後、システム消費電力400W程度です。
なおPPT:800Wに設定していますが、動作テーブルの限界に達するのでCPU Package Powerで700W前後がPrecision Boost Overdriveによるクロックアップで生じるCPU消費電力の上限となり、PPTを800W以上に設定してもあまり意味はありません。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_800W_cinebench
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_800W_power



「AMD Ryzen Threadripper 3990X」をPrecision Boost Overdriveでクロックアップした時に、市販のThreadripper専用CPUクーラーはどれくらいのPPTに対応できるのか検証してみました。
CPUクーラーには「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」を使用し、ファン回転数は1800RPMに固定しています。サーマルグリスの代わりに炭素繊維サーマルシート「Thermal Grizzly Carbonaut」を使用しています。また測定時は室温(ベンチ機付近の温度)が温度計で20度程度となるように注意しました。
DSC07820
冷却性能を比較するための負荷テストについては、FF14ベンチマークの動画(再生時間7分、4K解像度、60FPS、容量5.7GB)でTMPGEnc+x264を6並列のエンコードを行い(プロセッサグループは手動で3:3に分配)、30分以上に渡って負荷をかけ続けました。
注:CPUのストレステストについてはOCCTなど専用負荷ソフトを使用する検証が多いですが、当サイトではPCゲームや動画のエンコードなど一般的なユースで安定動作すればOKとういう観点から管理人の経験的に上の検証方法をストレステストとして採用しています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_stress

「ENERMAX LIQTECH TR4 II 360」&「Noctua NF-A12x25 PWM x3」の組み合わせは市販のRyzen Threadripper専用CPUクーラーとしては最強冷却性能の環境になりますが、PPT:560WまでであればCPU温度は平均77.2度、最大83.6度に収まっており、室温やPCケース吸排気が適切なら常用範囲内と考えていいと思います。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_temp
PPT別にコアクロックを比較すると、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はTDP=PPT:280Wの定格設定において全コアが平均3.1~3.2GHz程度で動作するのに対して、PPT:400Wで3.6~3.7GHz、PPT:500Wで3.8~3.9GHzとなります。さらにPPT:560Wで3.9~4.0GHzまでクロックアップし、CPU動作クロックテーブルの上限値へ収束していきます。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_clock
下はPrecision Boost Overdriveでクロックアップした時のPPTとCinebenchR20スコアの関係をまとめたグラフですが、PPT:700W辺りで「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の動作テーブルの限界に達し、コアクロックが4.0GHz前後に収束してベンチマークスコアも頭打ちになります。
「AMD Ryzen Threadripper 3990X」をPrecision Boost Overdriveでクロックアップする場合、市販のCPUクーラーで常用可能な(冷やすことができる)設定はせいぜいPPT:600W未満となっており、600W以上では性能の伸びも大分鈍ってきます。「AMD Ryzen Threadripper 3990X」をPrecision Boost OverdriveでクロックアップするのであればPPT:400~600Wの範囲内において、各自の環境で冷やせるPPTに設定するのがオススメです。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_CinebenchR20

なお定格の280Wや下位モデル3970XのPBOによる400W以下のCPU消費電力であれば、TRX40マザーボード各種はVRM電源回路&クーラーが強力なので問題ありませんでしたが、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」でPPT:400~600Wの設定でPrecision Boost Overdriveによるクロックアップを施すと、標準装備だけではVRM電源温度が非常に高温になることが予想されます。
90A対応Dr. MOSを採用する16フェーズVRM電源を搭載し、TRX40マザーボードの中でもトップクラスのVRM電源回路&VRM電源クーラーを搭載するASRock TRX40 Taichiでも3990Xで500~600Wクラスの負荷が長時間かかると標準装備だけではVRM電源温度が95度前後に達します。
ASRock TRX40 Taichi_FLIR_3990X_PBO-horz
「AMD Ryzen Threadripper 3990X」でPrecision Boost Overdriveによるクロックアップを行うのであれば、モノブロック型水冷ブロックでVRM電源ごと水冷化するか、VRM電源の冷却補助にスポットクーラーを増設するのがオススメです。
マザーボードVRM電源クーラーのレビュー記事一覧へ
マザーボードVRM電源クーラー



AMD Ryzen Threadripper 3990Xの基礎ベンチマーク

AMD Ryzen Threadripper 3990Xの基本的なCPU性能を専用ベンチマークソフトで検証しました。
この章ではPCMark 8とPCMark 10という総合ベンチマークソフトを使用していますが、デスクトップ向けの高性能CPUの性能比較ベンチマークとしては頭打ちな傾向があります。レビュー項目の1つとして参考までにスコア比較していますが、実用的なCPU性能については後半の個別性能比較を参考にしてください。
また同ベンチマークはシングルスレッド性能(動作クロックの高さ)が重要になる傾向も強く、近年のCPUを見ると、Intel第8/9世代Coreに比べて第2世代以前のAMD Ryzen CPUでは低めのスコアが出ていましたが、AMD第3世代RyzenはIntel第8/9世代Coreとそん色ないパフォーマンスを発揮できるようになっています。

まずは「PCMark 8 Creative Test (Run Accelerated)」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 8」は動画再生能力、DirectX9のグラフィック性能、Webブラウジング、ビデオチャットなど一般ユースにおけるPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトです。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PCM8_ss

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各CPU環境のPCMark 8ベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM8

「PCMark 10 Extended」のベンチマーク結果をチェックしていきます。「PCMark 10」はPCMark 8と同様にPCの総合的な性能を測定するためのベンチマークソフトですが、DirectX11に対応するなどPCMark 8よりも最近のPCの性能測定に最適化されています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PCM10_ss

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各CPU環境について、PCMark 10ベンチマークの総合スコアを比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM10_1

「PCMark 10 Extended」にはPCの基本性能を測る「Essentials」、ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」、クリエイティブ性能を測る Digital Content Creation」、ゲーム性能を測る「Gaming」の大きく分けて4つのテストグループがあるので、個別にベンチマークスコアを比較してみました。

PCの基本性能を測る「Essentials」は、アプリケーションの起動に要する時間を測る「App Start-up」、 ウェブブラウジングの性能を測る「Web Browsing」、1対1または多対多のビデオ会議をシミュレートする「Video Conferencing」の3つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なPC利用において大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Essentials」について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM10_2

ビジネスアプリケーション性能を測る「Productivity」は、ワープロソフト(マイクロソフトWordなど)の処理性能をシミュレートする「Writing」、表計算ソフト(マイクロソフトExcelなど)の処理性能をシミュレートする「Spreadsheets」の2つのワークロードで構成されています。
モバイル版Core i7 1065G7を搭載するSurface Pro 7との比較でわかりますが、一般的なオフィスワークにおいて大半のデスクトップ向けCPUは十分な性能を備えています。
「Productivity」について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM10_3

クリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation」は、写真に対するフィルタリング処理の性能をシミュレートする「Photo Editing」、動画編集の性能をシミュレートするワークロード「Video Editing」、レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作(3Dレンダリング)をシミュレーションする「Rendering and Visualization」の3つのワークロードで構成されています。
「Digital Content Creation」について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM10_4

ゲーム性能を測る「Gaming」は、グラフィックボードの性能測定で幅広く活用されているベンチマークソフト「3DMark」に収録された「Fire Strike」と同じベンチマークテストを実行するワークロードです。
「Gaming」について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_bench_PCM10_5



AMD Ryzen Threadripper 3990Xのクリエイティブ性能

AMD Ryzen Threadripper 3990Xについて3Dレンダリング、動画エンコード、RAW現像、PCゲーム/スマホアプリのビルドなどクリエイティブ作業に関する性能を各種ベンチマークソフトや実際のアプリケーションで検証しました。

AMD Ryzen Threadripper 3990Xの3Dレンダリング性能

CPUのマルチスレッド性能を比較するベンチマークソフトとして国内外で最も知られている「Cinebench R15」をはじめとして、Cinebenchの2019年最新バージョン「Cinebench R20」、オープンソース3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフト、3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトの4種類を使用して、CPUの3Dレンダリング性能についてベンチマーク測定を行いました。

Cinebench R15は3Dレンダリング性能を測定するベンチマークソフトになっており、マルチスレッド性能を測定するテストとシングルスレッド性能を測定するテストの2種類を実行しています。また2019年最新バージョンのCinebench R20についてはマルチスレッド性能を測定するテストのみを実行しました。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_cinebench-R15
AMD Ryzen Threadripper 3990X_cinebench-R20

Cinebench R15 マルチスレッド性能テストについて「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_cine_r15_multi

Cinebench R15 シングルスレッド性能テストについて「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_cine_r15_single

Cinebench R20 マルチスレッド性能テスト
について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_cine_r20_multi

3DCGソフト「Blender」の公式ベンチマークソフト
について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_blender_1_time
「Blender」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_blender_2_pef

3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_corona_1_time
3Dレンダラー「Corona Renderer」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_corona_2_pef

3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトについて「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_v-ray_1_time
3Dレンダラー「V-Ray」の公式ベンチマークソフトのレンダリング時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのレンダリング速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_rendering_v-ray_2_perf


AMD Ryzen Threadripper 3990Xの動画エンコード性能

続いて無料で利用できる動画編集ソフトとして国内外で多数のユーザーがいる「Aviutl」と、商用動画編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」と「Adobe Premiere Pro(Media Encoder)」を使用して、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較していきます。

AviutlとTMPGEnc Video Mastering Works 7はいずれも、現在主流なH.264 (MPEG-4 AVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x264」エンコーダ、そしてH.264より高圧縮・高画質で次世代規格として期待されているH.265(HEVC) ビデオストリームへエンコードを行う「x265」エンコーダが使用できるので、CPUをリソースとして各エンコーダで共通の動画ファイルのエンコードを行いました。
エンコードを行う動画ファイルについては、Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsのゲーム内ベンチマーク(60秒ほど)をNVIDIA ShadowPlayで録画したものを使用しています。1920×1080/60FPS/50Mbpsと3840×2160/60FPS/120Mbpsの2種類の動画ファイルを作成し、「1920×1080 to 1920×1080」、「3840×2160 to 1920×1080」、「3840×2160 to 3840×2160」の3種類のエンコードを行っています。
Aviutlのx264/x265のエンコード設定は次のスクリーンショットのようになっています。TMPGEnc Video Mastering Works 7については固定ビットレートで1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsに設定しています。
x264_encode_settingx265_encode_setting
なおエンコーダと解像度設定が同じであればaviutlとTMPGEncのCPU別エンコード速度の傾向は概ね一致するので、他のCPUレビューではaviutlのケースを抜粋してグラフを掲載していますが、バッチツールによって複数並列エンコードが容易なので「AMD Ryzen Threadripper 3990X」のレビューではTMPGEncを抜粋しています。
厳密にはソフトウェアによって若干CPUメーカー別で得意不得意もあるので、aviutlとTMPGEncの全CPU比較データはリンクから各自で参照してください。x2/x3/x4のバーについては同じエンコードを添え字の数だけ並列実行した時の合計変換フレームレートを示しています。AMD Ryzen Threadripper 3990Xについては単独エンコードのx1と6並列エンコードのx6の2種類のフレームレートを掲載しています。

なおフルHD解像度では8コア16スレッド程度、4K解像度では16コア32スレッド程度でマルチスレッド分散がボトルネックになり始め、1つのエンコードだけではCPUが遊び始めます。20コアオーバーのウルトラメニーコアCPUでマルチスレッド性能をフル活用しようと思うと、8K解像度のような超高解像度のエンコード、もしくは4K動画の複数並列エンコードを行う必要があるので注意してください。


x264エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x264_1920-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x264_3840-1920

x264エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.264 (MPEG-4 AVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x264_3840-3840

x265エンコーダによって1920×1080解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x265_1920-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の1920×1080解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x265_3840-1920

x265エンコーダによって3840×2160解像度の動画をH.265(HEVC)の3840×2160解像度へエンコードした時のエンコード速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ(Aviutl) / 全CPU比較データ(TMPGEnc)
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_aviutl_x265_3840-3840

加えてAdobe Premiere Pro(Media Encoder)による動画エンコードについても、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUの動画エンコード性能を比較しました。

Adobe Premiere Proのエンコード設定はCPUリソースのx264エンコードで、1920×1080へエンコードする場合は25Mbps、3840×2160へエンコードする場合は60Mbpsの固定ビットレートです。Media Encoderでは1つのプロジェクトを複数の設定で同時にエンコードできますが、複数のプロジェクトを同時にエンコードすることができないので単一エンコードのみを比較しています。
Adobe Premiere Proによる動画エンコードについてはAMD Ryzen CPUは苦手である評価されていることが多いですが、2019年現在では最適化も進んでおり、コアスレッド数とコアクロックに比例した性能が発揮できるようになっています。
【Adobe Premiere Pro 全CPU比較データ:1920to1920 / 3840to1920 / 3840to3840
AMD Ryzen Threadripper 3990X_encode_ADPP_x264


AMD Ryzen Threadripper 3990XのRAW現像性能

続いてDxO PhotoLabによるRAW現像を行って「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。「SONY DSC-RX100M5」で撮影した5472×3648解像度のRAW画像ファイル 100枚に対して、DxO PhotoLabの画質プリセット「DxO 標準」をベースにノイズ除去を「PRIME」に変更したプリセットを適用し、RAW現像を行いました。なおDxO PhotoLabによるRAW現像は並列処理数を設定できますが、CPUコア数の半分もしくはそれより一つ少ないくらいの並列処理で最速になるようです。
DxO PhotoLab
DxO PhotoLabによるRAW現像速度について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_DxO


AMD Ryzen Threadripper 3990XのPCゲーム/スマホアプリのビルド性能

最後に「Unreal Engine 4」や「Unity」などフリーウェアながら高画質なPCゲームやスマホゲームを製作可能なゲームエンジンを使用したゲーム制作におけるCPU性能の検証として、「Unreal Engine 4」で「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUの性能を比較していきます。
検証にはEpic Games Storeで無料配布されているデモプロジェクト「Infiltrator」を使用したビルド時間の比較を行います。検証設定としてリアルタイム表示はオフ、ライティングの品質をプロダクションとしています。Unreal Engine 4のバージョンは4.22.3、Windows10のバージョンは1903で統一しています。
Unreal Engine 4_Infiltrator_test
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果を比較すると次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_ue_1_time
「Unreal Engine 4 - Infiltrator」のビルド時間だけを見ても性能差が直感的にわかりにくいので、Core i9 9900Kを基準にして(全CPU比較データではCore i5 9400Fが基準)、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのビルド速度を性能比としてグラフ化しました。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_ue_2_perf



AMD Ryzen Threadripper 3990Xのゲーミング性能

AMD Ryzen Threadripper 3990XのPCゲームに関する性能を実ゲームを用いたベンチマーク測定で検証しました。
なお章タイトルではゲーミング性能と表記してはいますが、Intel第7/8/9世代Core-SやAMD第2/3世代Ryzenなどここ数年で発売された4コア4スレッド以上のCPUであればフルHD~4K解像度の60FPSターゲットにおいてCPUボトルネックが発生するケースは多くありません。そのためCPUゲーム性能比較の具体的な内容は”高フレームレートにおけるCPUボトルネック比較”と表現するのが実状に即しています。
ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとして6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。

ゲームタイトルにもよりますがPCゲームにおけるCPU負荷は基本的にTDP内に収まることが多く、CPUコアクロックは全コア最大動作倍率に張り付きます。フレームレートに対するCPUボトルネックの緩和においては、この全コア最大動作倍率の高さが重要になり、クリエイティブタスクと違って電力制限は支配的ではなくなります。(PCゲームではIntel製CPUのPL1、AMD製CPUのPPTは影響をほとんど及ぼさなくなる)
PC-Gaming_CPU-Power
Core i9 9900KやRyzen 7 3700XのようにTDPに対して全コア動作倍率の高いCPUでは、PCゲームにおいてもCPU使用率が高くなるハイフレームレートでCPU消費電力がTDPを超過するタイミングもありますが、TDP内に制限した場合と比較して大きな差は出ません。
そのためクリエイティブタスクなどここまでの検証において複数の電力制限で測定していたCPUも、PCゲームでは簡単のため電力制限が緩い方だけを使用して性能を測定します。
CPU_game_TDP


各CPUのゲーミング性能を測定するため統一検証機材として、2019年最新にして最速のGPUである「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti」を搭載したグラフィックボード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Core」を使用しています。
CPU Bench_Gaming_GPU
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme Coreは、RTX 2080 TiのAIBパートナーの中でも屈指のOCチューニング力を誇るZOTACによって良質なGPUコアが選別され、リファレンスよりも200MHz以上も高いブーストクロック、さらにGDDR6メモリのメモリクロックまで引き上げるという、RTX 2080 Tiグラフィックボードで最速を狙えるファクトリーOCが施されています。加えて、ZOTACを高品質メーカーとして一躍ブランド力を押し上げたAMP Extremeシリーズの代名詞とも言える3スロットを占有する超弩級な大型GPUクーラーが採用され、静音性も非常に優れたモデルです。
「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」をレビュー
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme


CPU別ゲーミング性能の比較には2019年最新PCゲームから、Assassin's Creed OdysseyTom Clancy's Ghost Recon WildlandsShadow of the Tomb RaiderMiddle-Earth: Shadow of Warの4種類を使用しています。60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定と、100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定の2種類について、各ゲームで平均フレームレートと最小フレームレートを測定しました。
Game_Performance
なおCPUボトルネック比較の性質上、平均FPSと最小FPSをある程度の精度で測定する必要があるため、検証ではほぼ同一シーンで測定が可能なゲーム内ベンチマークを使用しています。


AMD Ryzen Threadripper 3990Xのゲーム性能 - 4K解像度/60FPSターゲット

まずは60FPSの標準フレームレートをターゲットとした4K(3840×2160)解像度/高画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。
なお上述の通り60FPSターゲットでは基本的にCPUボトルネックは発生しないので、グラフの掲載順は性能(平均フレームレート)による昇順ではなく、当サイト既定のCPU分類順としています。

Assassin's Creed Odyssey(4K解像度、超高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_1_3840_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(4K解像度、非常に高い-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_1_3840_rg

Shadow of the Tomb Raider(4K解像度、DirectX12、最高-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_1_3840_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(4K解像度、ウルトラ-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_1_3840_sow


AMD Ryzen Threadripper 3990Xのゲーム性能 - フルHD解像度/ハイフレームレート

続いて100FPS以上のハイフレームレートをターゲットとしたフルHD(1920×1080)解像度/中画質設定のゲーミング性能について「AMD Ryzen Threadripper 3990X」や比較対象CPUのベンチマーク結果をチェックしていきます。

Assassin's Creed Odyssey(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_2_1920_acod

Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_2_1920_gr

Shadow of the Tomb Raider(フルHD解像度、DirectX12、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_2_1920_sottr

Middle-Earth: Shadow of War(フルHD解像度、中-画質プリセット)に関する「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を含めた各種CPUのベンチマーク結果は次のようになっています。 全CPU比較データ
AMD Ryzen Threadripper 3990X_game_2_1920_sow



CPUエンコーダとリアルタイム配信について

ゲーム実況やライブ配信と呼ばれるPCゲームのリアルタイム配信について、現在ではNVIDIA GeForce GTX 1660やAMD Radeon RX 580などミドルクラスGPUをエンコーダとすることでフルHD解像度で必要十分な画質とフレームレートが得られます。
GPUエンコーダは動作自体も軽いので、これらGPUエンコーダの登場によってリアルタイム配信やプレイ動画の録画におけるCPUエンコーダの役目は終わったというのが一時期の私見でしたが、メインストリーム向けCPUのコアスレッド数の増加に伴い、x264 Mediumのような高画質プリセットのプレイ&録画が一般ユーザー的にも現実的になってきています。

Youtube LiveやTwitchなどリアルタイム配信(ライブストリーミング)サービスで、PS4/Xbox/Switch等のコンシューマーゲーム機やPCゲームのプレイ動画・ゲーム実況を快適に配信するのに必要なCPU性能については、現在、連載を続けている【快適配信】シリーズで詳細に解説しています
一口にゲーム実況と言っても、『1.ビデオキャプチャを使用してPCは録画配信作業のみを行う』、『2.PC1台で同時にゲームプレイと録画配信を行う』の2つのケースに大別され、どちらで使用するのかで要求されるCPU性能やCPUメーカー毎の得手不得手など事情が変わってくるので注意してください。

ざっくりと現状でCPUを使用したリアルタイム配信・ゲーム実況に要求されるCPU性能だけ述べておくと、『ビデオキャプチャを使用した配信の最低水準は6コア12スレッドのCPU』、『ゲームをプレイしながら配信の最低水準は8コア16スレッドのCPU』です。



【快適配信】シリーズの記事一覧へ
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画質と快適性を求めるなら録画・配信専用マシンもオススメ

ビデオキャプチャ業界の進歩も目覚ましく、2018年に発売された「AVerMedia Live Gamer Ultra」は4K/60FPS/HDRやフルHD/240FPSの映像ソースを無遅延なパススルー表示しつつ、フルHD/60FPSのプレイ動画として録画・配信できるUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャとなっており、プレイ動画の録画・配信に関する多様なニーズを網羅し得る名機です。
4K/HDRや240FPSのパススルー対応「AVerMedia Live Gamer Ultra」をレビュー
AVerMedia Live Gamer ULTRA

前述の通りフルHD/60FPSの録画・配信であればGTX 1060程度の性能のGPUをエンコーダとすることで必要十分な画質が得られて動作も軽いので、録画配信のために高性能な反面、非常に高額なCPUに投資するよりも、多少コストがかかっても「AVerMedia Live Gamer Ultra」などのビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するほうが、録画・配信の手法としてはわかりやすくてハードルが低いと思います。
AMD Ryzen Threadripper 3990X review_00899

AVerMedia製ビデオキャプチャの最新おすすめ機種を機能比較
AVerMedia最新ビデオキャプチャのおすすめ

「AVerMedia Live Gamer Ultra」などUSB接続外付け機器型ビデオキャプチャと組み合わせて録画・配信用サブ機を構築するのであれば、ASRock Deskmini GTX 1060ベアボーン採用BTO PCの「G-GEAR alpha」や「GALLERIA Mini 1060」がおすすめです。
PCサイズはコンパクトなのでサブ機としてもあまり余分にスペースを占有せず、GPUにはGTX 1060を搭載しておりフルHD/60FPSのGPUエンコードにも余裕で対応できて、CPUには最大で「G-GEAR alpha」ならCore i7 8700、「GALLERIA Mini 1060」ならCore i7 7700を選択可能、2基の2.5インチSATA SSDと3基のM.2 SSDを搭載可能なのでストレージ拡張性も十分です。ASRock Deskmini GTXシリーズについてはレビューも公開しているので参考にしてみてください。
GTX 1060搭載で容積2.7LのスーパーコンパクトPC「GALLERIA Mini 1060」をレビュー
GALLERIA Mini 1060

G-GEAR alphaシリーズの販売ページへ




AMD Ryzen Threadripper 3990Xのレビューまとめ

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」を検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。

良いところ or 概要
  • 世界初のハイエンドデスクトップ向け64コア128スレッドCPU
  • 定格でメモリ周波数3200MHzに対応
  • TDP280Wとして全コアが実動平均で3.1~3.2GHz程度
  • 前世代TRで問題だった、CCDを跨ぐメモリアクセスというボトルネックを解消
  • Intel製CPUでは太刀打ちできない、圧倒的なマルチスレッド性能
  • 144FPS~240FPSのハイフレームレートなPCゲーミングにも対応可能
  • 64コア128スレッドCPUながら48万円程度というコストパフォーマンス
悪いところ or 注意点
  • 128論理コアを使用するにはWindows10 Proが必須
  • Windows環境では128論理コアを使えるアプリは一部に限られる
  • IHSが非常に大きいのでThreadripper専用CPUクーラーを推奨
  • マザーボードが5万円からと、メインストリーム向けAM4に比べて高価

温度・消費電力について

AMD Ryzen Threadripper 3990Xはメインストリーム向けRyzen CPUと同様に、CPUクーラーの性能が十分(CPU温度が閾値以下)であればXFR等による自動OCが機能しますが、Ryzen CPUと違う部分として(Ryzen CPUの多くではPPTが仕様値TDPよりも高く設定されている)、標準動作ではCPU Package Powerの上限値となるPPTが仕様値TDPと同じ280Wに設定されているので、シンプルにCPU消費電力280WのCPUとして運用できます。
CPU消費電力が大きいので高性能なCPUクーラーが要求されるものの、デフォルト設定で95度の閾値温度に達した時点でCPUクーラーの対応可能なCPU消費電力へ漸近していき、その範囲内で最大のパフォーマンスが発揮できるように調停する「Precision Boost 2 / Pure Power 2」が機能として組み込まれているので、CPU温度的にも安心かつ手軽に運用できます。

AMD Ryzen Threadripper 3990Xに最適なCPUクーラーは?と聞かれると、互換ブラケットがCPUに付属するAsetek OEMの簡易水冷CPUクーラーはベースプレートが小さいので、大型ベースプレートを採用したThreadripper専用CPUクーラーを推奨します。(定格で使う分にはAsetek OEMでも問題ないと思いますが)
中でも空冷CPUクーラーであればコンパクトで扱いやすい「Noctua NH-U12S TR4-SP3」か「be quiet! Dark Rock Pro TR4」、冷却性能を重視なら簡易水冷CPUクーラーのENERMAX LIQTECH TR4 IIシリーズがオススメです。
CPUの消費電力は4つのCCD+αに分散されるので、消費電力の大きさの割に意外とCPU温度は低くなるのは前世代2990WXの通りです。TDP280Wの定格運用であればCPU全体の消費電力は大きいですが、「Noctua NH-U12S TR4-SP3」のように120サイズ空冷の製品でも問題ないはずです。

各社から発売されている主要なThreadripper専用CPUクーラーについては、32コア64スレッドの上位モデルRyzen Threadripper 3970Xを対象にして、各製品でどれくらい冷やすことができるのか検証記事を色々と公開しているのでこちらを参考にしてください。
Ryzen Threadripper対応CPUクーラーのレビュー記事一覧へ
Threadripper_Cooler


クリエイティブ性能について

AMD Ryzen Threadripper 3990Xのクリエイティブ性能については、64コア128スレッドがTDP280Wにおいて全コア3.1~3.2GHz程度で動作するので、3Dレンダリングやコンパイリングなど65+論理コアのプロセッサグループの壁を超えることができるアプリでは、コアスレッド数×コアクロックというマルチスレッド性能の指標通りに32コア64スレッドの下位モデルRyzen Threadripper 3970Xを50~60%程度上回るパフォーマンスを発揮します。現在市場に出回っているCPUとしてはエンタープライズ向け製品も含めて間違いなく最強のマルチスレッド性能です。

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は先行して発売されたメインストリーム向け第3世代Ryzenと同じCCDが採用されているので、当然ながら、AVX2(AVX256)をネイティブ実行できるようになっており、第2世代以前のRyzen Threadripperが苦手とし、コアスレッド数に対してIntel製CPUよりも低速だったx265によるエンコードでも高いパフォーマンスを発揮します。
またCCDとIODを組み合わせるトポロジー設計を採用したことによって”3Dレンダリングなど一部の分野を除くとマルチスレッド性能の集約できない”という、2970WXや2990WXの欠点が「AMD Ryzen Threadripper 3990X」ではしっかりと解消されています。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_topology

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」のクリエイティブタスク性能について検証前は、ソフトウェア(Windows OSの仕様)を原因として2990WXのように用途の限定される第3世代WXでは?と想定していたのですが、実際に触ってみると意外に汎用性の高いCPUだと考えが変わりました。
まず3Dレンダリングやゲーム・アプリ製作のようにプロセッサグループの壁を超えられるワークロードについては特に問題ないということは言うまでもありません。対応していないアプリもありますが、65+論理コア対応の可否は事前に調べがつくはずなので、対応ソフトも次第に増えていくでしょう。
その他のワークロードについても使い方次第で「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は3970Xと比較して高いパフォーマンスを発揮できます。
1つ目の例、動画のエンコードについてはそもそも20コアを超えた辺りからx264やx265ではCPUが遊び始めていて、並列エンコードが前提になっていました。特にx264では複数のエンコード実行exeが走る並列エンコードにおいて、1つ1つの実行exeがプロセッサグループの壁を超える必要はなく、空いているプロセッサグループに上手くタスクを割り振りできれば2つのプロセッサグループを活用できます。この辺りはアプリもしくはOSに対応を期待したいところです。
x265ならプロセッサグループの壁を超えることができ(一方のプロセッサグループの使用率が微妙ですが)、4K動画のエンコードを6並列くらいで実行すると総合で3970Xを50%程度も上回る変換速度が実現できます。
2つ目の例としてRAW現像についても動画のエンコードと考え方は同じで、画像1枚1枚に対する現像exeが数十個並列して実行されるので、プロセッサグループに対する分配さえ最適化されれば、さらに性能向上が期待できると思います。
AMD Ryzen Threadripper 3990X_PBO_Performance
またThreadripperを含め第3世代Ryzenは基本的に定格で運用するのが一番美味しいCPUなのですが、TDP280Wでは電力制限が効いて他のモデルよりもコアクロックが大幅に低くなる「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はPrecision Boost Overdriveで電力制限を解除してクロックアップすると比較的大きく性能が伸びます。
コアスレッド数2倍ながら下位モデル3970Xに対して50~60%程度高い性能しか発揮できないのは、3990Xの全コア負荷時のコアクロックが3.1~3.2GHz程度だからというのは、3.1×2/4.0=1.55という単純計算でも簡単に確認できます。「AMD Ryzen Threadripper 3990X」もPrecision Boost Overdriveで電力制限を解除すると下位モデル3970Xと同じく全コア3.9~4.0GHzで運用することが可能で、3Dレンダリングのようにマルチスレッド性能に対して綺麗にスケーリングするワークロードであれば3970Xの2倍近いパフォーマンスを発揮できます。


詳しい説明は3970Xや3960Xのレビューで行った通りなので割愛しますが、
クリエイティブタスクにおいて20~30コア超のハイエンドデスクトップCPUとしては性能、省電力性、安価さのどれをとってみてもAMD Ryzen Threadripper 3990Xなど第3世代Ryzen ThreadripperのほうがIntel製CPUよりも圧倒的に魅力を感じるという評価で間違いないと思います。
なお20コアを超えてくるとマルチスレッド分散が理由で性能スケーリングが丸まってくる傾向も見て取れるので、24コア48スレッドの「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はクリエイティブタスク用のハイエンドデスクトップ向けCPUとして最も使い勝手が良く、一番美味しい存在だと思います。
第3世代Ryzen Threadripperでは稀だと思いますが、使用するソフトウェアが最適化の問題でAND製CPU環境では性能を発揮できないと分かっているというケースでもない限り、現状ではIntel製CPUがここに食いこむのはかなり難しいと思います。


ゲーム性能について

まずゲーム性能検証の冒頭でも述べたようにフルHD~4K解像度の60FPSターゲットであれば4コア4スレッド以上の最新CPUであればどれを使用しても大差はありません。ただし最新の超高画質で重いゲームの場合、ゲームプレイの裏で次のシーンのロード作業が動くとロードが遅くなったりスタッター(カクツキ)が発生することがあるので、ゲーミングPCに搭載するCPUとしては6コア6スレッド以上を個人的に推奨しています。
また60FPSターゲットであってもAssassin's Creed OdysseyのようにCPUによって差が出るケースもあるので、PCゲームメーカーの最適化の優先順位まで考慮するとIntelのメインストリーム向け最新CPUのPCゲーミングにおける安定性にはやはり信頼がおけます。

GeForce RTX 2080 Tiを使用したハイフレームレート環境について、第2世代以前のRyzen Threadripper CPUはIntel製CPUと比較してこの分野では超えられない壁があり明確に劣っていましたが、第3世代Ryzen ThreadripperではIntel第10世代Core-XやIntel Xeon W-3175Xに対して僅かに劣る傾向はあるものの、各ゲームタイトル別に比較できるまでに性能が改善しています。
前世代32コアCPUのRyzen Threadripper 2990WXは後に実装されたDynamic Local Modeを使用してもプレイ中にスタッターが発生する頻度が高く、PCゲーミングにおける実用性は微妙という問題がありましたが、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」はクリエイティブタスクでも言及した”CCDとIODを組み合わせるトポロジー設計”や、様々な設計改良によるシングルスレッド性能の向上によって、ハイフレームレートなPCゲーミングに対応できるようになったところは特に見逃せないポイントです。

PC1台でPCゲームのプレイとゲーム実況の配信というマルチタスクを行っても、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」なら64コアによる圧倒的なマルチスレッド性能で余裕をもって処理できますし、ゲームプレイ中に録画した動画の編集も快適にこなせます。


総評 - プロセッサグループの壁を超えるには集約か分散か

「AMD Ryzen Threadripper 3990X」の64コア128スレッドという圧倒的なマルチスレッド性能を活用するにはWindows10における2つのプロセッサグループとどう向き合うかが重要になります。
CinebenchやBlenderの3DレンダリングやUnreal Engine 4のゲーム・アプリ製作などアプリが65+論理コアに対応していてプロセッサグループの壁を正面から超えるというのが正攻法であり、このイメージが強いので3990Xは使い難そうなイメージですが、それ以外にも、並列エンコードやRAW現像のようにタスクを分散させることでプロセッサグループの壁を無視して128論理コアを全て使うという手があります。
65+論理コア対応という正面突破にせよタスク分散という裏口にせよ、どちらも128論理コアを全て使うことができるので、総合したマルチスレッド性能は概ねコアスレッド数×コアクロックに比例し、Ryzen Threadripper 3970Xを50~60%程度上回る性能を発揮できます。
タスクを分散させてプロセッサグループの壁を無視するという裏口的な手法も十分実用に達しているので、事前に想定していた(もっと用途が限定される使いにくいCPU、2990WXのような、と考えていた)よりは汎用性が高いCPUでした。

64コア128スレッドという圧倒的リソースの「AMD Ryzen Threadripper 3990X」は他の追随を許さない最強マルチスレッド性能なCPUであることは間違いありません。1つのタスクに集約するにせよ、複数のタスクで分散するにせよ、128スレッドを使い切る自信があるクリエイターにとっては3990ドルの価値がある武器だと思います。

以上、「AMD Ryzen Threadripper 3990X」のレビューでした。
AMD Ryzen Threadripper 3990X


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AMD Ryzen Threadripper 3990Xなど第3世代Ryzen Threadripperを搭載したBTO PCとしては、サイコムからリリースされているCPUとGPUの両方を簡易水冷クーラーで冷やすデュアル水冷採用BTO PC「G-Master Hydro TRX40 Extreme」がオススメです。
G-Master Hydro TRX40 Extremeは2020年最新ハイエンドGPUのGeForce RTX 2080 TiやGeForce RTX 2080 SUPERを独自に簡易水冷化したグラフィックボードが選択でき、CPUクーラーには「Fractal Design Celsius S36」、マザーボードには「ASUS Prime TRX40-Pro」、PCケースには「Fractal Design Define R6」など当サイトの個別レビュー記事で高く評価しているパーツが採用されています。簡易水冷化したグラフィックボードの冷却性能と静音性が高いことはもちろん、細かい構成パーツも自作PC上位クラスの高品質なものが採用されており、数ある第3世代Ryzen Threadripper搭載BTO PCの中でもイチオシの一台です。




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Ryzen Threadripperは従来のCPUに比べて非常に大きいヒートスプレッダが採用されているので、大型ベースコアを採用するThreadripper専用CPUクーラーがおすすめです。


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(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)



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