Samsung製microSD Expressのサーマルスロットリングについて

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Samsung製microSD Expressメモリーカード(Samsung microSD Express Card 256GB for Nintendo Switch 2)をSD Express対応メモリーカードリーダーで使用した時に、サーマルスロットリングによってコピー速度が低下する件について、詳細に検証したのでその結果をまとめました。

あくまでファイルコピー(読み出し)の性能差です。Switch 2で使用する場合はほぼ誤差程度の違いしかありません。

任天堂ライセンス商品 SD ExpressカードのSanDisk製とSamsung製についてまとめた記事の中で追記するには長くなり過ぎるのと、情報がごちゃごちゃしているので別記事にしました。

以下、解説に使用するのは任天堂ライセンス商品SanDisk製 microSD ExpressカードとSamsung製 microSD Expressカードです。

SanDisk製やSamsnung製でも市販モデルは挙動や性能が異なる可能性もあります。

目次
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理想的なファイルコピー性能は?

まず大前提としてサーマルスロットリングが発生していない場合、SanDisk製とSamsung製の理想的な連続読み出し性能の差は15%程度です。

あくまでファイルコピー(読み出し)の性能差です。Switch 2で使用する場合はほぼ誤差程度の違いしかありません。

サーマルスロットリングの発生とは関係なく、素の性能差として15%程度はSanDisk製のほうがSamsung製よりも連続読み出しが高速なので、1つ当たり数GB以上の動画ファイルや、1つ当たり10~20MBの写真が入った数GB以上の画像フォルダをコピーする場合、コピー速度の差も15%程度になります。

消費電力に差はある?

microSD ExpressカードをM.2に変換する変換ボードを使用して、SanDisk製とSamsung製の消費電力を検証しました。M.2 SSDヒートシンクも組み合わせてサーマルスロットリングの発生しない条件で測定しています。

PCへのファイルコピーにおいて重要になるのは一番左の連続読み出しの時の消費電力ですが、SanDisk製もSamsung製も消費電力には大差ありません

サーマルスロットリングの発生条件(閾値温度)がほぼ同じだとすると、この程度の消費電力の違いでどちらか一方にだけサーマルスロットリングが発生して、大幅に性能が低下するというのは考え難いです。

Samsung製のほうが消費電力が高いから、サーマルスロットリングが発生するわけではない。

Samsung製microSD Expressカードを高温や爆熱と評価するのも間違いです。

ちなみにSwitch 2で使用する場合、ゲームロード中の消費電力はPCやPS5に倣うなら、4Kランダム読み出し(左から4番目)とアイドル(一番右)の消費電力が重要になります。

ゲームロードの消費電力は連続読み書きの半分以下でしかないので、Switch 2で使用する場合にサーマルスロットリングによる性能低下は基本的に考えなくていいです。

多少の優劣はありますが、この程度の発熱の違いでサーマルスロットリングの発生が変わるとは思えません。

一部のカードリーダーで消費電力が増える?

M.2変換ボードを使用して測定したメモリーカードの素の消費電力はSanDisk製もSamsung製もほぼ同じでしたが、「SanDisk PRO-READER SD Express Dual Card」と組み合わせた場合、USB Type-Cワットチェッカーで連続読み出し中に電力を測定するとSamsung製の方が0.3W高くなりました。

一方、アイドル状態ではSanDisk製が1.76W、Samsung製が1.06Wでした。SanDisk製のほうが高いという傾向はそのままですが、M.2変換ボードで測定した0.2W程度の差から、メモリーカードリーダーでは0.7W程度に差が広がっています。

USB変換にした場合に連続読み出しの消費電力が増えるのかというと半信半疑です。

メモリーカード自体の連続読み出しが遅いのに、カードリーダー側の消費電力が増えることがある、というのも納得し辛く…、何でSamsung製の方が高くなるのか、よく分かりません。

とはいえ測定値的にはそうなっているので、「SanDisk PRO-READER SD Express Dual Card」など一部メモリーカードリーダーとの組み合わせにおいて、Samsung製でサーマルスロットリングが発生しやすくなる一因になっている可能性はあります。

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サーマルスロットリングが発生する条件は?

SanDisk製とSamsung製で連続読み出しや連続書き込みきの負荷をかけて、わざとサーマルスロットリングを発生させて、それぞれどういう条件(温度)でサーマルスロットリングによる速度低下が生じるのか検証しました。

SanDisk製のサーマルスロットリング条件

SanDisk製のサーマルスロットリングの発生条件は非常にシンプルです。ソフトウェアモニタリング可能な温度センサーにおいて85度前後を閾値にして速度制御が行われます。

閾値以下なら理想的な読み出し速度 900MB/sを発揮しますが、それを超えた瞬間にUHS-I相当の90MB/sまで一気に低下します。

サーマルスロットリングで速度が低下しても、85度未満で3~5秒の経過、もしくは82度前後を下回ることを条件にしてサーマルスロットリングは解除され元の速さに戻ります。あってないようなヒステリシス的制御です。

連続書き込みの場合

SanDisk製は連続書き込みでもサーマルスロットリングが発生する条件や挙動は連続読み出しと同じでした。

85度の閾値を上回る温度になると、UHS-I相当の90MB/s程度まで速度が低下します。

Samsung製のサーマルスロットリング条件

Samsung製のサーマルスロットリングの発生条件や速度低下の挙動は少々複雑です。なお、複雑ではありますが温度制御の設計が異常というわけではありません。

Samsung製はダイナミックサーマルガード(DTG)という名前の通り、温度によって動的に読み書き速度を制御しているようです。

2つのグラフを見比べると分かりますが、モニタリング可能な温度センサーの読み値で78度、83度、93度など速度が変化する閾値温度が複数あり、低下後の速度も50MB/s程度の刻みで何段階かあります。

最初に制御の入る温度が78度なのでSanDisk製の85度よりも低く、製品寿命や耐久性を重視したチューニングではありますが、過保護という程でもない気がします。

またSanDisk製と違ってヒステリシス的な挙動も強く、2つ目のグラフでは最初の閾値である83度を下回っても速度は500MB/s程度までしか戻りません。70度台半ばまで温度が下がってやっと元の速度に戻ります。(もしくは途中に存在する閾値を下回ってから一定時間経過が条件かも)

連続書き込みの場合

Samsung製は連続書き込みでも複数段階で速度が変化します。

同じ条件で負荷をかけると差はある?

Samsung製は少し低い閾値でサーマルスロットリングが発生するため、条件を揃えて負荷をかけたM.2変換ボードにおける検証において、Samsung製でだけサーマルスロットリングによる速度低下が生じるケースの再現は確認しています。

また似たような発熱に対して、各メモリーカードの内部温度センサーの読み値的に、Samsung製の方が若干高温を示しやすいので、サーマルスロットリングによる速度制御が発生しやすい感じも見られました。

ただしファンによる冷却なしで半ば強制的にサーマルスロットリングが発生させたグラフを見ての通り、Samsung製の方が”大幅に”高発熱・高温でサーマルスロットリングが生じやすいと考えるのはやはり違うと思います。

Samsung製の温度制御(サーマルスロットリング)は複雑ですが、筆者がメモリーカードリーダーで検証した時に体験した、長時間放置しても戻らない速度低下とは感触が大分違います。

サーマルスロットリング発生・解除フラグの誤作動が原因

ここまでの検証結果で示した通り、

  • Samsung製の消費電力はSanDisk製とほぼ同じ
  • サーマルスロットリングの条件も85度の閾値でほぼ同じ

でした。この条件だとSamsung製で発生するなら、SanDisk製でもサーマルスロットリングによる大幅な性能低下が発生していておかしくないのですが、そうなっていない理由が謎でしたが、サーマルスロットリングの発生・解除フラグの誤作動が原因でした。

意図的に高負荷をかけてサーマルスロットリングによる速度低下状態にしたところ、アイドル状態で10分以上放置するなど、本来ならサーマルスロットリングによる速度低下が解除される条件にしても解除されない状態を再現できました。

この状態でファイルコピー検証を行うと、本来なら600MB/s程度になるはずの読み出し速度が、400MB/s台に落ち込みます。

アイドル状態で放置してもサーマルスロットリングによる速度低下が解除されませんが、メモリーカードリーダーのスロットから抜き差しして、再びCrystalDiskMarkを実行すると読み出し速度が700MB/s以上に戻ります。

M.2変換ボードで検証した時は意図的にサーマルスロットリングを発生させてもこうはならなかったので、サーマルスロットリングの発生・解除フラグの誤作動が生じていると考えていいと思います。

SanDisk製とSamsung製は消費電力(発熱)はほぼ同じですが、Samsung製のサーマルスロットリングは制御が複雑で、閾値温度もすこし低めに設定されているため、多少の速度低下は発生しやすい傾向があることは検証していて感じました。

メモリーカードリーダーと組み合わせた時に、カードリーダー込みのUSB消費電力が0.3W程度高くなることも確認しているので、それが影響している可能性もあります。

ただファイルコピー速度で言うと、SanDisk製の720MB/s程度に対して、サーマルスロットリングで多少性能を落とすとしても580~620MB/s程度がSamsung製の本来の性能です。

メモリーカードリーダーと相性が悪い

というのが現状での結論です。

Samsung製のファームウェア最適化に問題がある可能性もありますが、SD Express対応カードリーダーが手元に1機種しかなく、市場製品も今のところ2種類なので、これ以上は判断材料に乏しいです。

なお本件において、SD Express対応メモリーカードリーダー「SanDisk PRO-READER SD Express Dual Card」が悪いのかというと、同じSanDisk製のmicroSD Expressカードなら正常に動作しているので、カードリーダー側を責めるのも正しくないと思います。

他社製メモリーカードと組み合わせることが前提のPC周辺機器メーカー製メモリーカードリーダーなら話も変わりますが、自社製メモリーカードを作っているメーカーなので、他社製品にも最適化されていることに越したことはないものの、義務とまではいかないいよねと。

以上、『Samsung製microSD Expressのサーマルスロットリングについて』でした。

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